“視覚を通して”見えないものを見る力

私は菅木志雄さんの作品が好きです。

菅さんはモノ派の代表的な方で、石などの自然物や鉄板、ロープなどのモノをただ配置している作品を作っています。

ある一定のルールは感じますが本当にただ“いい感じ”に配置しているだけです。その“いい感じ”が好きです。

 

なぜなのかは実は前にも書いたのですが、想像する余裕があるから。その想像して見ることでその一つの作品からたくさんのモノを見ることができるところがいいなと思います。そのことで、ただ作品を見せるもの、見るものでなく、作者とのコミュニケーションを感じました。

そのことから見ることに「意識をさせる」ことに興味が湧きました。

「視覚を通して見えないものを見る」という言葉は高松次郎さんの本からの抜粋ですが、まずそこには視覚があるところがポイントだと思います。視覚させるものは作品であり、そこから自身の内面に問いかけることで、見えないものが見ることができる。作品は何かに気づくきっかけのためのものであり、作者の心ではあるが、鑑賞者をうつす鏡でもあると思います。

そのように見ることで、作品の幅は広がり、鑑賞者自身を広げることになると思います。自分の世界が豊かになるという事はこのことだと思います。

 

そして美術講師をしているので、将来美術に関わることがなかったとしても、このことは自分を育てていく中でより豊かに世界を見ることができることだと思い、どうやったらそれが伝わるのだろうと考えていました。

私はずっと美術畑にいましたが、どうやったらうまくなるのかと表面上のことばかり考えていたので、テクニックは教えられるけれど、見方をどう伝えたらいいかわからなかったのです。ただ教えるのではなく、気づく体験をして欲しいと思うので言葉で説明もしたくありませんでした。

 

そのように思っている時に京造の学生から「鑑賞会」というものがあることを聞きました。アートプロデュース学科(ASP)で一回生の必修の授業として行われているArt comunication produce(ACOP)というものでした。アートプロデュースというので私はてっきりキュレーターなどを育てる学科かと思っていたのですが、聞いてみると「見る力」を鍛えているということで、興味が湧きました。そして最初の説明会にて学科長の副のり子先生からの講習を受けました。その講習での内容はまさに私が感じていたことだったので言語化が苦手な私にとって大変学びになりました。

 

次から1回生がナビゲーターをする鑑賞会が行われるのですが、すごく楽しみです。説明会の時に前に立って軽い自己紹介をしてくれていましたが、慣れないけれど頑張っている姿に何故か泣けました。講師やスタッフの方と学生のまとっている空気がとても良かったので、真剣に向き合ってる学科なんだろうなぁと思いました。その分学生が気負ってる感じがしたのでこちらはリラックスした空気を出してフォロワーになろうと思います。あともし仲良くなれたら、何か還元できればなぁと思います。